甲斐駒ケ岳

数日前、剣岳 点の記という映画が公開された。
登山の経験がある人なら普通の光景?プロの山屋の人があれを見て何というかはわからないが、出演した役者たちが興奮気味にその撮影現場を語る気持が良く分かる。

当時俺は、毎月仲間たちを引き連れキャンプをしていた。
同じ所にはあまり行かないのだが、サントリーの白州工場に水を注ぐ尾白川渓谷の奥地には何度か足を運んだ。行くと毎度気になる立て札「甲斐駒ケ岳黒戸尾根登山道」
ある年の5月ここを進むことにした。
俺を含むメンバー全員が登山経験無し、日本の登山は、山好きのじいさんばーさんが散歩の延長で楽しんでいるイメージがあり、若い俺らにはなんの問題もないだろうと思いつつも本能的になにかを感じ、地図と携帯性の良い食糧の準備を整えた。
山渓のガイドマップによると五合目小屋までが5時間+七合目小屋までそこから1時間、山頂までが2時間30分とある。我々若いし体力あるし、朝出れば途中で飯食って午後には山頂。その日は7合目小屋でゆっくりしてから一泊し、翌日日の出前に上って御来光てのもよいな!
”標高差約2,200メートル。日本最大級の登りだ。かつてはメーンの登山道だったが、苦しい登りを嫌って最近は登山者が少ない。”ん?意味がわからないな・・仲間には黙っておこう。

早朝、尾白川渓谷入り口の駐車場に車をとめ、6時頃からだらだらと出発をはじめた。
川沿いに細道を進んでいくと竹宇駒ケ岳神社があり、その近くに渓谷を渡る吊り橋がある。登山道の立て札がある分かれ道は吊り橋の先にある。
http://park11.wakwak.com/~m.suzuki1954/P10102511.jpg
※写真他から借りました。(1)
ここから岩や木の根がでこぼこした足場の悪い急斜面となる。あたりは木々におおわれ、展望はなく薄暗く風が遮断され蒸し暑いなかおびたたしい数の不快な小さい虫がぶんぶんと飛び回り顔にまとわりつく。俺たちの他に人っ子ひとりいない。
多少山道登るけど大したことなさそうだ、すぐ付くとおもうよ!の言葉だけで何も調べてきていない他4人は一言も話さなくなっていた。俺からのネタ振りにも反応が悪い。
どう見ても登山向きではない体型の当時どこに行くにも一緒でたぶん俺の娘は物心つく頃からいつも身近にいる彼を家族だと思っていたに違いない。男は何度も足が吊ったとうずくまり、そのたび休憩をとり靴を脱ぐ靴ずれで皮がむけ血がにじんでいた。数時間歩くと笹の平という場所に入りその名前の通り当たり一面に笹が生い茂りそこをくねくねと掘りぬいた足場の悪い斜面を延々と歩く。ここも深い木々に覆われているのでやはり展望はない。後に、メンバーが笹地獄と命名した。
ここらへんで一つの間違いに気がついた。
登山専門店にあるガイドマップの参考歩行時間は、日ごろ登山をしている人向けのものであるということ。若いからとか関係ない・・趣味でマラソンをしているおっさんたちはかなりの高齢でも42.195キロ完走できる。
慣れたトレッカーは軽装でくるらしいが、万が一を期待して用意した過剰装備はザックは満タンで一人当たり約20キロぐらい負荷によるダメージは予想以上にきつい。
出発して7時間を超えるが、いまだ五合目小屋にたどりつかない。
2つ目の間違いは、5月はいわゆる山開きされた登山シーズンではないということ。
笹地獄を抜け八丁登りと名のつく急で長い登りを終えたあたりで傾斜は緩くなり黒戸尾根に到達する。
黒戸山の頂上をかすめるとあたりは一気に広がった。
ガイドマップに出ていた「刃渡り」と名前がついている石の尾根がある。両側は超急斜面に削れた岩のTOPを腐りかけた一本の鎖を命綱に数十メーターほど渡るポイントだ。
http://park11.wakwak.com/~m.suzuki1954/P10102441.jpg
※写真他から借りました。(2)
予想していたほど危険そうではないが、突風でもふけばあの世行きは間違いない。その緊張と恐怖から脳が活性化し嫌な疲れが一気に抜けた。
ここを過ぎるとしばらく黒戸尾根の北斜面をしばらく進むこととなる。
ここらの登山道は深い残雪で埋まってる。中途半端の時期が悪く、溶け始めているので、うかつに歩くとまるで落とし穴にはまったかのように腰までズボリと落ちる。それを避けるために凍っていそうなところを選んで進むのだが、それはそれでバランスが悪くなり滑りやすくなる。 しだい慣れテンポよく進むようになれたが、登山向きではない体型の親友はその体重が不利となり開き直って常時雪に埋もれた状態でまるでラッセル車のようにゆっくりと進んでいた。
そこから少し下りになる。下りは体が軽く感じたが、普通の生活ではありえないだろ!と叫びたくなるような崩れかけた梯子場や鎖場が何箇所かあり山は自己責任の世界だということを実感させられた。
巨大な岩を縫うように深く下ったその下に小屋があった。これが五合目小屋か・・?
http://park11.wakwak.com/~m.suzuki1954/P10102391.jpg
※写真他から借りました。(3)

つづく ・ω|

1 件のコメント:

Alf Giuliano さんのコメント...

リアルアットワ山登り、、、、。
落ちるなよw

ということで、つづきに期待w